書籍のお求めはお近くの書店または、オンライン書店で購入できます。
ご購入に関するお問い合わせは、メールにて受け付けております。 メール:genki@genki-shobou.co.jp TEL03-5283-3934 幻戯書房刊行の書籍の詳細は小社ホームページをご覧ください。 幻戯書房 (げんきしょぼう)は 歌人で作家の辺見じゅんが、父であり、角川書店の創立者である角川源義の創業の精神を受け継ぎ、設立した出版社です。 ライフログ
最新のコメント
以前の記事
2025年 06月 2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 2024年 07月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 04月 2022年 03月 2021年 12月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2006年 11月 2006年 09月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 03月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 05月 検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2025年 06月 10日
![]() 〈ルリユール叢書〉第48回配本 (69冊目) ガブリエル・マルセル 古川正樹=訳 渇 き (カワキ) 予価:本体価格2,900円+税 予定ページ数:232頁 四六変形・ソフト上製 ISBN978-4-86488-327-6 C0397 刊行予定:2025年7月下旬 僕の側から思うことは、パパは極度に不幸な人間だということだ。パパが自分の痛みと連絡をとり合うことが少ないほど、それだけ不幸なんだ。一種の朦朧(もうろう)とした「渇き(ソワフ)」で、それがパパを貪り食っているんだ。パパ自身はこの渇きを知らない――まさに、この渇きがパパを貪り食ってきたがゆえに。 日常生活における真の「愛」の実相が家庭劇の対話を通じて追求され、登場人物各自の自発的な自己反省から人間存在そのものの内なる飢え、〈渇き〉という存在論的問題が浮き彫りにされる――「形而上的体験」が具現化された、哲学者ガブリエル・マルセル中期の代表的戯曲。本邦初訳。 マルセルの戯曲は、人間の日常生活の現実を凝視するところから生まれており、何ら架空の創作ではないところに意味があります。われわれが多く見ないふりをしているものを彼は凝視して創作していることに、私は気づきます。彼の作劇は、最も身近なものへの関心から生まれているのです。だから、われわれ自身を反省させないものは一つもありません。このようにしてわれわれは彼の劇によって自身の「状況」を反省し、意識するようになります。この意味は大きいと私は思います。アメデもまた、われわれ自身の状況的反省の媒体であり、彼の「渇き」を省察することも、われわれの自己反省行為そのものとなります。私がマルセルの戯曲と関わるのも、最も身近なものに隠れている最も深いものへの関心からであり、それを感得したいという欲求からです。――「訳者解説」より 【著者略歴】 ガブリエル・マルセル(Gabriel Marcel 1889–1973) フランスの哲学者・劇作家。パリに生まれる。6、7歳で劇作を試みた。十代半ばには音楽を、やがて哲学を志してソルボンヌ大学に入学。21歳で教授資格論文「シェリング哲学との関係におけるコールリッジの形而上学的諸理念」により合格した後、保養先の英国で交霊術にも深い関心を懐く。若年時からの知的・人間的素地、経験や関心に基づき、愛の問題を中心とする独創的な哲学的反省を展開しつづけた。カトリックとなるも教義とは無縁で傍観的な立場に留まった。 【訳者略歴】古川正樹(ふるかわ・まさき) 1957年11月、鹿児島県に生まれる。鹿児島県立鶴丸高等学校卒業。仏語論文「メーヌ・ド・ビランにおける哲学と宗教」により、パリ゠ソルボンヌ大学哲学博士(成績mention très honorable)取得。鹿児島大学・早稲田大学講師等を務める。著書に、彫刻家高田博厚が大画家ジョルジュ・ルオーの軌跡に即して述べた深い人間思想を初めて本格的に論じた『形而上的アンティミスム序説――高田博厚による自己愛の存在論』(舷燈社)、訳書にガブリエル・マルセル『稜線の路』(幻戯書房)がある。 #
by genkishobou
| 2025-06-10 13:45
| 新刊情報
2025年 06月 10日
![]() 〈ルリユール叢書〉第48回配本 (68冊目) ピエール・ジャン・ジューヴ 小川美登里・飯塚陽子=訳 カトリーヌ・クラシャの冒険 予価:本体価格4,500円+税 予定ページ数:408頁 四六変形・ソフト上製 ISBN978-4-86488-326-9 C0397 刊行予定:2025年5月下旬 彼らの沈黙はふたり分だが、あるのはたったひとつの沈黙だった。なぜなら言葉は発せられ、理解され、そこで止まってしまうけれど、沈黙は広がり、相手に届き、地下に眠る運命的な力で相手を包み込み、抱きしめるから。 ボードレール、ネルヴァル、ヘルダーリンに列せられる詩人・小説家ピエール・ジャン・ジューヴ――映画女優カトリーヌをめぐる三角関係と破局を描く『ヘカテー』。小説の結構が瓦解し、主人公の夢と現が混淆する『ヴァガドゥ』。めくるめく二つの物語がオペラのように紡がれる詩的長編小説。 美とはひとつの解放である〔…〕ジューヴの作品ほどそれを見事に表すものはない。──ルネ・ミーシャ 私たちの時代の他のどの書物も比較にならないほどに、この作品ではすべてが発見であり、啓示であり、〈新たな生〉なのです。──ガブリエル・ブヌール あなたの芸術は凝縮が生んだ奇跡です。──マックス・ジャコブ 1931年、文学の世界で夢と無意識の理論に最初に応答したのがジューヴではなかったとしても、彼はフロイトの第二局所論についてもっともよく知り、一九二〇年の『快感原則の彼岸』が論述するエロスとタナトスの対立を最初に活用したひとりでもある。──ジャン・スタロバンスキー 【著者略歴】 ピエール・ジャン・ジューヴ(Pierre Jean Jouve 1887–1976) 詩人、小説家、批評家。フランス北部アラスに生まれる。第一次世界大戦中、平和主義思想に触れるも、戦後は一転、聖性に貫かれた詩を探究しつづけた。フロイトの精神分析理論に初めて触れたフランス人のひとりでもあり、ジャック・ラカンを始めとする多くがその作品の重要性を指摘している。タゴール、シェイクスピア、ヘルダーリンのほか、アッシジの聖フランチェスコ、アビラの聖テレサの著作の翻訳者でもあり、モーツアルトやベルクのオペラに関する著作もある。 【訳者略歴】 小川美登里(おがわ・みどり) 岐阜県生まれ。カーン大学にて博士号取得、現在、筑波大学人文社会系准教授。主な著書にVoix, musique, altérité : Duras, Quignard, Butor (L’Harmattan, 2010)、『ル・アーヴルから長崎へ』(パスカル・キニャールとの共著、水声社)、主な訳書にパスカル・キニャール『いにしえの光』、『楽園のおもかげ』、『静かな小舟』(〈最後の王国〉シリーズ、水声社)、クリスチャン・ドゥメ『三つの庵』(共訳、幻戯書房)、ミシェル・ビュトール『レペルトワール IV[1974]』(共訳、幻戯書房)など。 飯塚陽子(いいづか・ようこ) 1993年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部仏文学専攻卒業。パリ第四大学フランス文学科修士課程修了。現在、フランスの食品関連企業にて通訳および渉外業務に従事している。 #
by genkishobou
| 2025-06-10 13:35
| 新刊情報
2025年 05月 13日
![]() 〈ルリユール叢書〉第47回配本 (67冊目) ![]() クロード・シモン 芳川泰久=訳 綱渡り 予価:本体価格2,900円+税 予定ページ数:272頁 四六変形・ソフト上製 ISBN978-4-86488-325-2 C0397 刊行予定:2025年6月下旬 通過する弾(たま)の音を聞きながら、男たちはまるで豚のように意地汚く撃ってくるなと思い、そのとき確実に待っていたのは――この背中がずいぶん広く幻想的なほどにも透過性のあるように感じながら――歩きつづけることからこちらを解放してくれる一撃だった。 画家になることの断念から「新しい小説」を書く作家へとみずからを変貌させた小説家クロード・シモン――作家自身の自画像を描いた〈私小説〉を想起させる自伝的小説にして、文学の前衛運動をいち早く先取りしていた、世界文学最初の〈ヌーヴォー・ロマン〉作品。本邦初訳。 そして出来事とは何か?〔…〕外部からとつぜん起こる出来事〔ローズの死〕じたい、外部からくるのではない、モンテス〔以上、『風』の登場人物〕の内部で先取りされていて、同じように彼の内部でじつに熟していく。それは生起する何かというより、存在しないではいられなかった何かなのだ――「緩慢で容赦のない分娩の最後の言葉」〔『風』〕。以下、『綱渡り』の叫び声を参照。「うめいている声はまるで叫びを装った一節(パッセージ)みたいで」、「〔…〕この秘儀のようなことへの恐怖から女が叫びをあげ〔…〕そうした秘儀は、女の体を用い、さんざんな目にあわせ、これに激しい苦痛を与え〔…〕成し遂げられねばならないことを成し遂げる」――モーリス・メルロ゠ポンティ 【著者略歴】 クロード・シモン(Claude Simon 1913–2005) 1913年、マダガスカル生まれ。満1歳にならないうちに父を、11歳で母を亡くす。1925年、パリのスタニスラス校の寄宿生となり、バカロレア試験をはさんでイギリスで語学研修。パリで絵画を学ぶ。1936年、バルセロナに滞在しスペイン内戦を観察。全国労働者連合(CNT)と連絡を保ち、武器の購入と輸送に協力。1939年、竜騎兵連隊に召集され、捕虜となるも脱走。1945年、『ペテン師』を出版。『風』以降「新しい小説」を書く。代表作に『フランドルへの道』、『農耕詩』など。1985年、ノーベル文学賞を受賞。 【訳者紹介】 芳川泰久(よしかわ・やすひさ) 1951年、埼玉県生まれ。早稲田大学名誉教授。著書に、『闘う小説家 バルザック』(せりか書房)、『謎とき『失われた時を求めて』』(新潮社)、『『ボヴァリー夫人』をごく私的に読む』、『バルザック×テクスト論〈あら皮〉から読む『人間喜劇』』(以上、せりか書房)、『村上春樹とフィクショナルなもの――「地下鉄サリン事件」以降のメタファー物語論』(幻戯書房)ほか多数。訳書にクロード・シモン『農耕詩』(白水社)、『ガリバー』(幻戯書房)、バルザック『サラジーヌ 他三篇』『ゴプセック・毬打つ猫の店』(以上、岩波文庫)、フローベール『ボヴァリー夫人』(新潮文庫)ほか多数。 [訳者解説より〕 本書は、シュルレアリスムの出版で知られるサジテール社から刊行されたクロード・シモンの二作目の小説『綱渡り La Corde raide』(1947)の全訳である。これを読みはじめた当初は、シモンがこんな小説を書いていたのかという新鮮な驚きを強く感じたが、読み終えたとき、二作目ではあるけれど、最初の作品にはその作家のすべてがあるという言葉をつくづく思い返していた。それくらい、本書からシモンの後の小説に太い重要なベクトルが伸びていて、その貴重さに圧倒されたのだった。いや、それだけではない。本書じたいすでにいち早く(ちなみに、ロブ゠グリエの最初の小説『弑逆者』の執筆より二年も早く)、しかも〈ヌーヴォー・ロマン〉を先取りしていて、第二次大戦直後の当時、じつに斬新な小説の書き方を実践しているのだ。そのうえ、〈私小説〉を連想させるほど自身と自身の体験を語り混ぜてもいる。たとえばそこから、画家を目指していたクロード・シモンが小説家になりつつある転成の現場が見えてくるのだが、いったい絵画を描くことがどのように小説を書くことにつながるのか、その連繫をシモンの特徴とともに本書の解説として少しでもあとづけられればと思う。 #
by genkishobou
| 2025-05-13 10:04
| 新刊情報
2025年 04月 11日
![]() ![]() 〈ルリユール叢書〉第46回配本 (66冊目) ピエール・エルバール 森井良=訳 アルキュオネ 力線 予価:本体価格3,400円+税 予定ページ数:312頁 四六変形・ソフト上製 ISBN978-4-86488-323-8 C0397 刊行予定:2025年5月下旬 「近々、戦争があるって噂だぞ」リノが告げた。 ファビヤンは僕を見て微笑んだ。腕をまっすぐ頭上に持ちあげ、流れに身をまかせた。両手で水中にある僕のくるぶしを摑み、やがて腿まで摑んできたかと思うと、とつぜん浮きあがった。 対独抵抗運動に挺身した「闘士」の作家ピエール・エルバール――無人島で営まれる少年同士の同性愛的な友情を活写するBL小説『アルキュオネ』、スターリニズム下の若き反抗者たちの同性愛と政治参加を巧みに描いた、エルバールの私小説的作品『力線』の2篇を収録。本邦初訳。 彼は熱狂的な存在であり、地獄の魅力をもっている。──アンドレ・ジッド 何を読んだかって? ピエール・エルバールの『アルキュオネ』だ。そこではすべてがえもいわれぬ美点を有しているように思われる。言葉、一文一文がその後に残す音の響き、作者のこのうえなく控えめな書きぶり、さりながら言いたいことはすべて言っている。愛と怒りの書である本作は、決して押しつけがましくない手によって書かれているのだ。──ジュリヤン・グリーン エルバールの最良の部分! 〔『力線』には〕彼がまったきかたちで、私の愛する姿のままに存在している。〔…〕並外れて透明で光り輝く、鏡のような著作。──ロジェ・マルタン・デュ・ガール ピエール・エルバールの文体とは? ジッドを思わせるような、揺らめくほどの透徹さ、そこには媚びも気どりもない。無駄を排した明快さ、そこから官能を秘めた魅力が立ち昇ってくる。──ドミニク・フェルナンデス 【著者略歴】 ピエール・エルバール(Pierre Herbart 1903–74) 1903年、北仏ダンケルク生まれ。造船業の名家に育つも、5歳で父が出奔、孤独な少年期を過ごす。18歳で上京し、ジャン・コクトーと交流。アンドレ・ジッドの友人となり、以後秘書としても仕える。反植民地主義を奉じて共産党に入党。ソヴィエトに拠点を移し、「国際文学」編集長を務める。第二次大戦中は対独抵抗運動に参加し、レンヌ解放に尽力。戦後はジャーナリストとして活躍の場を広げ、自身の政治活動を総括した後、優れた私小説的作品を残す。代表作に『放浪者』『アルキュオネ』『黄金時代』『力線』など。 【訳者紹介】 森井良(もりい・りょう) 1984年、千葉県生まれ。パリ第七大学博士課程修了(博士)。獨協大学フランス語学科准教授。訳書にエリック・マルティ『サドと二十世紀』(水声社)、ロジェ・ペールフィット他『特別な友情――フランスBL小説セレクション』(編纂・共訳、新潮社)、ジョルジュ・シムノン『運河の家 人殺し』(幻戯書房)、小説に「ミックスルーム」(第一一九回文學界新人賞佳作)がある。 #
by genkishobou
| 2025-04-11 10:38
| 新刊情報
2025年 04月 11日
![]() 装幀は緒方修一さん ![]() 銀河叢書25冊目 村上玄一 編 太宰治非戦小説集 本体3600円 978-4-86488-324-5 C0393 2025年5月下旬刊 相手の人のけちな用心深さが悲しく、 いよいよ世の中がいやでいやでたまらなくなります。 文学が荒廃した戦時下も、太宰は太宰であった。 人間の、もっと根深いところから滲み出た資質。 戦前、戦中、戦後の18篇。 「僕は本能的に、或いは肉体的に兵隊がきらいであった。」 大戦争がはじまって、何だか不安で、身を粉にして働いて、お役に立ちたいというのは噓で、本当は、そんな立派そうな口実を設けて、自身の軽はずみな空想を実現しようと、何かしら、よい機会をねらっているのかも知れない。ここに、こうして坐って、ぼんやりした顔をしているけれども、胸の中では、不埒な計画がちろちろ燃えているような気もする。(「待つ」昭和17年) 太宰治(だざいおさむ)小説家。本名津島修治。明治四十二年(一九〇九)六月十九日、青森県生まれ。津島家は地主。東京帝国大学仏文科中退。大正十二年(一九二三)、貴族院議員だった父源右衛門死去、青森中学入学。中学時代は同人雑誌「蜃気楼」を発行。芥川龍之介や井伏鱒二の影響を受け、昭和二年(一九二七)に入学した弘前高校時代はプロレタリア文学へも傾斜。昭和五年に上京、非合法運動に関わったことで長兄文治に分家除籍され、バーの女給の田部シメ子と鎌倉の腰越で心中を図り、田部は死亡、自殺幇助罪に問われるも起訴猶予。高校時代以来の馴染みの芸妓小山初代との同棲後も、習作を続けながら関わった非合法運動は、昭和七年、兄の命で青森警察署に自首することで縁が切れた。上京後まもなく井伏鱒二に師事、やがて佐藤春夫の庇護も受ける一方で、都新聞社の入社試験失敗、鎌倉の山中での縊死未遂、虫垂炎から併発した腹膜炎で一時重態、その治療中に鎮痛剤パビナールを多用して中毒。この間の昭和十年、第一回芥川賞候補、落選。翌年、同賞の選考委員だった佐藤春夫に書簡で受賞を懇願。パビナール中毒根治のための精神科病院入院中に初代が姦通、やがて離別。昭和十四年、石原美知子と結婚。敗戦は故郷津軽で迎え、翌年発表の戯曲「冬の花火」では当時の状況に対して「大戦中もへんな指導者ばかり多くて閉口だったけれど、こんどはまた日本再建とやらの指導者のインフレーションのようですね。おそろしい事だわ。日本はこれからきっと、もっともっと駄目になると思うわ」と疑念を呈した。再上京後はマスコミに無頼派などと持て囃され、昭和二十三年(一九四八)六月十三日に山崎富栄と玉川上水で投身自殺を遂げ、遺体は三十九回目の誕生日に見つかった。(編集部) 編者 村上玄一(むらかみげんいち)編集者、著述業、日本大学芸術学部文芸学科研究所元教授。昭和二十四年(一九四九)六月十九日、宮崎市生まれ。高校時代に『太宰治全集』を購入、秘かに読む。日大芸術学部卒業後、日本地域社会研究所、読売新聞社、学習研究社、角川書店、ケイエスエス、エクシーズ、全通企画などで出版編集の仕事に従事。主な企画編集書物に『安岡章太郎エッセイ全集』全八巻(読売新聞社)、『20世紀断層 野坂昭如単行本未収録小説集成』全五巻+別巻(幻戯書房)など。著書に『ジュニアは戦場へ行った』『生き方の練習』『死に方の実習』『マインドコントロールに勝つ』『優勝祈願』『記者クラブって何だ』『わかる 読ませる 小さな文章』。近刊は『ZOOMに背を向けた大学教授 コロナ禍のオンライン授業』(幻戯書房)。ほか野坂昭如との対談『亡国の輩』、論考に「太宰治・三島由紀夫・三浦和義――本当に死にたかったのか」(江古田文学)など。 収録作品 Ⅰ 戦 前 温泉 大正12年(1923) 列車 昭和8年(1933) 葉 昭和9年(1934) 二十世紀旗手 昭和12年(1937) 黄金風景 昭和14年(1939) 新郎 昭和17年(1942) Ⅱ 戦 中 十二月八日 昭和17年(1942) 律子と貞子 昭和17年(1942) 待つ 昭和17年(1942) 佳日 昭和19年(1944) 散華 昭和19年(1944) 瘤取り ―お伽草紙 昭和20年(1945) 舌切雀 ―お伽草紙 昭和20年(1945) Ⅲ 戦 後 未帰還の友に 昭和21年(1946) 冬の花火 ―三幕 昭和21年(1946) メリイクリスマス 昭和22年(1947) 桜桃 昭和23年(1948) 家庭の幸福 昭和23年(1948) 解説 太宰治の非戦的姿勢 村上玄一 #
by genkishobou
| 2025-04-11 10:24
| 新刊情報
|
ファン申請 |
||