辺見じゅん遺稿エッセイ集刊行にあたって
2011年9月21日、野分たつ日の未明、幻戯書房のオーナーであった辺見じゅんは、あちらの時間へと旅立ってしまった。幻戯書房は社員5名が残され、作家、歌人として雑誌や新聞に発表したエッセイも数多残された。
まもなく逝って一年。辺見が残したエッセイが、このまま、散逸してしまうことは、あまりにも忍びない。辺見は、自身の作家・歌人としての立場と出版社社長としての立場を混同しないよう自身を律していた。自著を自社から刊行することを是としなかった。しかし、遺稿を改めて読み返してみると、辺見のノンフィクション作品も、短歌も俳句も、そして出版社を起こしたことも、父・角川源義という弦から放たれた矢のひとつひとつであるということが窺え、生前の姿が想起された。1年前と同じ5名の社員は、辺見の追悼の気持ちを込め、刊行を願った。ご遺族も刊行に了解していただけた。ご遺族に感謝申し上げる。読者のみなさまが本書によって辺見に思いを寄せていただければ、天涯という原郷に逝ってしまった辺見も、本書の刊行をにこやかに諾としていることと確信している。
辺見じゅん 一周忌 追悼出版
辺見じゅん遺稿エッセイ集(全3冊)
1970年代の作家デビュー当時から最近まで執筆され、書籍未収録のままになっていたエッセイ(一部ノンフィクション)を、自伝的日常的作品、短歌や歌人に関するもの、俳句をめぐるものの3冊にまとめる。
■歌人として、作家として、角川家の長女として
夕鶴の家 父と私
家族、文学、民話、昭和史、そして自身について―ひたむきな生を求め続けた
「昭和の語り部」の全貌をたどる。おもに自伝的エッセイ+ノンフィクション
ISBN978-4-86488-002-2 288頁予定
■短歌の解明を抜きにして日本人の心は捉えられない
桔梗の風 天涯からの歌
短歌に賭けた男と女の苛烈な生、そして「御製」「御歌」について。源郷をうたう
歌人が遺した、「文学の志」への恋歌。和歌・短歌、歌人について
ISBN978-4-86488-3-9 192頁予定
■俳句を通して父を知る
飛花落葉 季を旅して
父・角川源義亡きあと訪れた日本の村々で、土地の民話と季節が呼び起こした
さまざまな記憶――俳句および俳人への遙かなる想い。「俳句」連載エッセイを中心に
ISBN978486488-004-6 208頁予定
四六上製 各2200円+税
9月10日頃、刊行。
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