11月刊のお知らせ・2点
名翻訳家のこの10年の「老い」と折り合う日々
常盤新平
明日の友を数えれば
四六上製/256頁/本体2500円
ISBN978-4-86488-009-1
望みはなるべくささやかなほうがいい
町を歩き、本と親しみ、コーヒーを味わう。
81歳……老いとつき合う日々を綴った最新エッセイ集。
(本文より)昔は読んでもわからなかった小説を再読して感激したり、懇意の寿司屋が鎌倉や逗子の沖でたまに獲れる白あじを出してくれたり、街なかで絶世の美女を見かけたりすると、長生きはするものだと思う。こうして、私は長生きはするものだと、年はとりたくないものだとの間をうろうろしている。
年に一つ、小さな仕事ができればいい。小さければ小さいほど、その小さなことをやるのに肩肘張らなくていいし、髭も気持ちよく剃れる(本文より)
男が歳を重ねることのひとつのお手本となるしみしみじした文章。常盤さんの境地は、年配の方々の共感をよぶものと思います。
生誕110年 私小説の短篇の名手、上林曉の新発見作品集
上林 曉
ツェッペリン飛行船と黙想
四六上製/368頁/本体3800円
978-4-86488-010-7
文学者としてのまなざしと、生活者としてのぬくみ。同人誌時代の創作から晩年の随筆まで、新たに発見された未発表原稿を含む貴重な全集未収録作品120篇を、初めて一冊に。
喧騒なる環境の下に在つて、
海底のやうな生活がしてみたいのだ。
(本文より)いつの時代にも古さを保つということは、いつも当世とある距離を保つということだ。私は当世風なものの浮沈を文学史で知り、またまのあたり見て来た。私が古きによって、当世に対してある距離を保っているのは、それからおしえられた確信に基くものだといったら、大言として笑われるであろうか。
2点とも、11月22日配本を目指して、製作中です。