トリビュート百人一首
刊行を記念して、百人一首の和歌を受けての新作短歌を募集させていただきました。たくさんのご応募をいただいたなかで、優秀作品10首をえらばさせていただきました。
田子の浦の製紙工場でつくらるる紙の白さは富士の賜物 東江 敬
本歌:田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ 4
わが家は宮殿(パレス)
なれどもワンルーム それでいいのさ一人暮らしは 月下 桜
本歌:わが庵は都の辰巳しかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり 8
アクセルを最寄りインターチェンジまで踏み込む事故で死ねるくらいに
酒井真帆
本歌:わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ 20
夏の夜に また酔いながら 良き友と ヤツはいずこと バーで語らう
穂積出雲
本歌:夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいずこに月宿るらむ 36
許されぬ恋をするなら覚悟しろ秘密厳守だ快楽のため 佐藤 薫
本歌:忍ぶれど色に出にけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで 40
「したあとの俺ってなんだか違うよな バージョンアップしたってかんじ?」 月下 桜
本歌:逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり 43
君の肩ごしに明日が見たいのです瀑布のごときジャスミンの庭に 柳原恵津子
本歌:あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな 56
黒髪の乱れを隠し会う今朝はすぐに強がる癖も直らず 稲垣三鷹
本歌:ながからむ心も知らず黒髪の乱れてけさはものをこそ思へ 80
未来などないとわたくしだけが泣きながら歯車ぎしりと嵌める 酒井真帆
本歌:難波江の蘆のかりねのひとよゆゑ身を尽くしてや恋ひわたるべき 88
来ぬ人よひとたび我は魔女とならむ焼くや蜥蜴の身を焦がしつつ 鬼火有一
本歌:来ぬ人を松帆の浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ 97
掲載順は本歌順です。以上10首とさせていただきます。おひとりで複数歌ご応募いただいた方もそれぞれ選考させていただきました。2首選ばさせていただいた方には、賞品の幻戯書房便箋と辺見じゅん一筆箋(富山・高志の国文学館 製)は2セットお送り申し上げます。
ご応募ありがとうございました。