3月新刊情報２

大坂(おおざか）の魂を取り戻す、ビルドゥングスロマン
町田 康
関東戎夷焼煮袋かんとうじゅういやきにぶくろ
四六上製　296頁　本体予価1800円　ISBN978-4-86488-120-3 C0093
2017年3月24日頃刊

本然の自分に立ち返るのだ、とその声は言っているのであった。
故郷喪失の悲しみから、上方のソウルフード、うどん、ホルモン、お好み焼、土手焼、イカ焼をこしらえ、これを食すことで見えた宇宙。革命ではない。維新でもない。もちろん自由や平等でもない。愛などという眠たいものでもない。　　
（「大阪人」「サイゾー」連載）

各種スポーツを中継放送するアナウンサーが、サムライスピリットなどと絶叫する。職人魂。報道魂。企業魂。学者魂。ラーメン魂、役者魂。商人魂、スキューバダイビング魂、サーファー魂、うどん屋魂、芸人魂、貧民魂、保険屋魂、偏屈魂、デリヘル魂、牛丼魂、左翼魂、ボンジョビ魂、メンヘラ魂、派遣魂、ＩＴ魂、出歯亀魂、シャブ中魂、詐欺師魂、魂はどんなものにも附着して、そのものの存在しない実質として、そのものの外側を飾り立てる、実に便利なシロモノである。（本文より）

関東戎夷焼煮袋

町田 康 / 幻戯書房