向井豊昭小説選
骨踊り四六判並製/640頁/2019年1月下旬刊行予定
ISBN978-4-86488-164-7 C0093 ¥4600E
あらゆる小説ジャンルを呑み込んだ強靭な文体。アイヌ文化と「ヤマト」の差別に対する苛烈な問題意識――おそるべきゲリラ作家の入手困難な代表作を精選したメガ・コレクション。平成の日本文学シーンに衝撃を与えたデビュー作「BARABARA」の原形長篇(表題作)をはじめ、現存一部にもかかわらず話題を呼んだ初期作「脱殻(カイセイエ)」、もはや何にも似ていない独自の境地を開いた「祖父三部作」など、知られざる傑作長・中・短篇6作を(ほぼ)初書籍化。さらに関連文献や、向井を再評価すべく批評家三人が語りおろした鼎談など、作品を読み解く巻末資料も充実。没後10年……もう、この世界文学の巨人を見逃すことはできない!
*カバー装画は『電話・睡眠・音楽』で話題の漫画家・
川勝徳重氏による描き下ろし
■内容
(小説)1(初期短篇)
鳩笛[1970]
脱殻(カイセイエ)[1972]
2(長篇)
骨(コツ)踊り(「BARABARA」原型)[未発表]
3(祖父三部作)
ええじゃないか[1996]
武蔵国豊島郡練馬城パノラマ大写真[1998]
あゝうつくしや[2000]
(資料)『根室・千島歴史人名事典』より「向井夷希微」[2002]
早稲田文学新人賞受賞の言葉[1996]
単行本『BARABARA』あとがき[1999]
やあ、向井さん[2007]
平岡篤頼「フランス小説の現在」[1984]
(解説)鼎談:岡和田晃、東條慎生、山城むつみ「向井豊昭を読み直す」
■解説鼎談より抜粋
岡和田晃氏――ヤマトに対する反逆者を探り・書く。後藤明生風に言えばそれが向井さん自身の「日本近代文学との戦い」につながる。
東條慎生氏――文学のルーツである祖父について、その逸脱をたどりつつ小説の語りもまた不断に逸脱しながらたどるのが「祖父三部作」だと思います。
■「すばる」18年12月号より
山城むつみ氏――この本には、最小限、二つの衝撃力が秘められている。ひとつは「脱殻」、もうひとつは「あゝうつくしや」だ。その衝撃力は、「驚嘆すべき」とか「瞠目すべき」という讃辞を大きく食み出て、私は困惑を禁じ得なかった。
【著者略歴】(むかい・とよあき)1933年、東京生まれ。祖父は詩人の向井夷希微(いきび)。東京大空襲ののち下北半島・川内町(現むつ市)に疎開。中学卒業後、鉱山労働に従事するも結核となり、療養生活を経て玉川大学文学部通信教育課程で教員免許を取得。北海道日高地方の小学校で25年間勤務した後、上京。1996年、「BARABARA」で第12回早稲田文学新人賞を当時最年長の62歳で受賞、反骨の「マイナー文学」作家として注目を集める。死の直前までゲリラ的な作品発表を継続したが、2008年、肝臓癌で逝去。商業出版の既刊単著に『BARABARA』(四谷ラウンド、1999)、『DOVADOVA』(四谷ラウンド、2001)、『怪道をゆく』(早稲田文学会/太田出版、2008)、『飛ぶくしゃみ 向井豊昭傑作集』(未來社、2014)がある。