別所真紀子浜藻崎陽歌仙帖 はまもきようかせんちょう装幀は真田幸治さん
ISBN978-4-86488-180-7
C0093 ¥2400E
四六判上製 272頁
おなごの人も俳諧に遊ぶ楽しさを知ったなら、世の中はもっと住み良くなりはしないかしら。――江戸時代に諸国を行脚し、旅先で歌仙を巻いた実在の女俳諧師・五十嵐浜藻。そして彼女が史上初めて完成させた、すべて女性ばかりの付合(連句集)『八重山吹』。江戸期に比類のない同書始まりの地・長崎(=崎陽)を舞台に、俳諧小説の第一人者が大胆に虚実を交え、その創成秘話を描く長篇。
*五十嵐浜藻(1772-1848)=武蔵大谷村(現町田市)生まれた女性俳諧師。小林一茶・夏目成美・鈴木道彦・井上士朗など、その実力は当時の著名俳人から讃を受けるも、生涯には謎が多い。
*『八重山吹』=1810年刊。江戸俳諧史唯一の、女性だけによる付合集。2012年、町田市民文学館より翻刻。
【目次】其の一 青北風
其の二 柘榴膾
其の三 神無月
其の四 枯尾花
其の五 日見峠
附篇 五十嵐浜藻の生涯と仕事
あとがき
参考資料
五十嵐浜藻年譜
【本文より】「面白い歌仙にいたしましょうよ、男衆の度肝を抜くような」
「まあ」
「私はおなご衆ばかりの付合集を上板したいと思うております。何年かかるか果して集にするほどおなご衆が見つかるかどうか、心もとないのですけれど、もし願いが叶えばこの一巻が巻頭になります」
まあ、と口を開けたお佐太の眼がみるみる潤んできた。
「では詠みあげます」
【著者略歴】(べっしょ・まきこ)
1934年、島根県生まれ。詩人・作家。連句誌「解纜」主宰。著書として評論に『芭蕉にひらかれた俳諧の女性史』(長谷川如是閑賞入賞論文所収)、『江戸おんな歳時記』(幻戯書房。読売文学賞随筆・紀行賞受賞)など。五十嵐浜藻を主役としたこれまでの小説に『つらつら椿』、『残る螢』がある。