
〈ルリユール叢書〉
バリェ゠インクラン 大楠栄三=訳
独裁者ティラノ・バンデラス
灼熱の地の小説 予価:本体価格4200円+税
予定ページ数:456頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-193-7 C0397
刊行予定:2020年2月末
衛兵の交代に目を光らす彼の横顔は、司祭の蝶ネクタイをつけ黒いサングラスをかけた髑髏[どくろ]のようだ。ウナムーノらスペイン〈98年世代〉の作家バリェ゠インクランが独自の小説技法「エスペルペント」で描き出した、いびつで歪んだグロテスクな現実世界――
ガルシア゠マルケス、フエンテスら世界文学者に継承される
〈独裁者小説〉の先駆的作品。本邦初訳。
【著者略歴】バリェ゠インクラン(Valle-Inclán 1866–1936)
ガリシア地方ポンテベドラ生まれのスペインの作家。耽美的愛の世界を描いた〈ソナタ〉四部作で地位を確立、劇作に専念した後には、独自のエスペルペント美学にもとづき現実を滑稽かつ冷徹に描き出し〈九八年世代〉を審美的にリードした。長い髪と山羊ひげに丸眼鏡、腕を切断したため力なく垂れた左袖という幻影的な風采、遠慮のない物言いからの諍いと決闘、女優の妻との愛憎劇といったエピソードにつきない。
【訳者紹介】大楠栄三(おおぐす・えいぞう)
一九六五年、福岡県生まれ。東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。現在、明治大学法学部教授。専門は十九世紀後半から二十世紀初頭のスペイン小説・文化。訳書に、『ホセ・マルティ選集 第1巻――文学篇』(共訳、日本経済評論社)、ベニート・ペレス゠ガルドス『ドニャ・ペルフェクタ――完璧な婦人』、エミリア・パルド゠バサン『ウリョーアの館』(ともに現代企画室)がある。