ルリユール叢書 第11回配本
シュテファン・ツヴァイク 宇和川雄・籠碧=訳
聖 伝予価:本体価格3,000円+税
予定ページ数:304頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-205-7 C0397
2020年8月下旬刊
その目はあまりにも死んだ兄の目に似ていた。あの時、逆賊のテントで、みずからの手で殺したあの兄の目に……絶対平和主義を貫き、正しい生き方を求め、
最後には自死を選んだ伝記作家の名手ツヴァイク―
聖書、聖典を材に、時代の「証人」として
第一次大戦中から亡命時代に至る激動の時代に書き残した、
人類永遠の主題「戦争と平和」をめぐる四つの物語。
本邦初訳を含む新編新訳。
【著者略歴
】シュテファン・ツヴァイク(Stefan Zweig 1881–1942)
1881年ウィーンのユダヤ系の裕福な家庭に生まれる。ウィーンとベルリンの大学で学んだあと、作家として立つ。大学卒業後、フランス、イタリア、オランダ、インド、アメリカを巡る。第一次世界大戦中はロマン・ロランとともに反戦活動を展開し、ヨーロッパの人々の連帯を説く。ヒトラー政権の樹立後、ロンドンに亡命し、さらにアメリカ、ブラジルへと転居。1942年2月22日、妻とともに自殺。自伝『昨日の世界』をはじめ、伝記小説に『人類の星の時間』『ジョゼフ・フーシェ』、心理小説に『不安』『チェス奇譚』などがある。
【訳者紹介
】宇和川雄(うわがわ・ゆう)
1985年愛媛県松山市出身。京都大学文学研究科博士後期課程を出た後、『ミクロロギーと普遍史――ベンヤミンの歴史哲学』で京都大学博士号(文学)を取得。現在、関西学院大学准教授。専門はヴァルター・ベンヤミンと近現代ドイツ語圏の文学・思想。共訳書に、ジュビレ・クレーマー著『メディア・使者・伝達作用――メディア性の「形而上学」の試み』(晃洋書房)がある。
籠碧(かご・みどり)
1990年愛媛県松山市出身。京都大学文学研究科博士後期課程を出た後、『20世紀前半ドイツ語圏文学における「狂気」のイメージ―シュニッツラー、デーブリーン、ツヴァイク―』で京都大学博士号(文学)を取得。現在、三重大学特任講師。主な業績にDie Flucht ins System: Die Skepsis gegenüber der Psychiatrie in Arthur Schnitzlers »Flucht in die Finsternis«などがある。
シュテファン・ツヴァイクは、自死する前に、世界が彼に何をあたえ、そして奪ったかを書きとめた。その記述は、まぎれもない絶望の冷徹さからくる容赦のない正確さをもってなされた。彼は名声の喜びと屈辱の災禍を記録する。彼は、自分がそこから追放された楽園について語る。
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ハンナ・アーレントあなたこそは本当にわれわれの時代が必要としている、高潔なヨーロッパ精神の体現者です。このような人が現れるのをわたしは二十年来待ちわびていました。われわれロマンス語圏の国には、どうしてあなたほどのスケールの批評家がいないのでしょう!
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ロマン・ロランツヴァイクの作品の多くは、無垢でありながら闇の領域に足を踏み入れてしまう人物の視点から語られている。わたしは常々、ツヴァイク自身は冒険をしないタイプの人、つまり彼が作品のなかで掘り下げて書いているのはあくまでも自分が興味をもった出来事で、彼自身の体験ではないのだと思っていた。だが事実はまったく逆のようだ。
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ウェス・アンダーソン