北村岳人詩と批評
わたしという異邦へ、978-4-86488-229-3 C0092 本体3000円
四六上製 288頁
2021年8月下旬刊行
置き去りにしてきた〈情況〉への純粋な問いかけを大人たちに想起させる、瑞々しい若き感性と思弁。詩と批評。
〈心〉や〈像〉ということにほんとうにまともなかんがえをあたえたのは、ヘーゲルではなく、吉本隆明であった。この際、わたしたちは言語について踏み入れないわけにはいかない。
【本文/附録より
】吉本隆明は〈心〉とはなにかということをかんがえるなかであることにぶつかっている。それは〈心像〉が個別的な自己にとってだけ現実的でありうることや時代を共有したところの他在にたいしても〈心像〉は意識の一般的構成以外を共有できないこと、そして物体の実体的な形象にさえも自己は届きがたいということなどが含みこまれてひとつの「失望」として書かれている。
神楽坂へうねって
高田馬場で疲れ果てた
もう一度、階段を降り地下鉄に乗り
まだか
まだか と
ドアの近くで細い風を呼吸した
いつもの駅に着くと
雨が降り止む限界のところで
薄暗くなっていた
とりわけ九段下だからというわけでもない
それが階段の下からでもわかった
【著者略歴
】きたむら・がくと
1997年東京生まれ。
詩集に『逆立』(2020年、港の人)がある。