東 龍造
フェイドアウト 日本に映画を持ち込んだ男、荒木和一
ISBN978-4-86488-236-1 C0093 288頁 四六上製
2021年11月下旬刊
活動写真の先駆者(パイオニア)たち。
そや、喪が明けたときにすぐにでも公開できるよう会場を押さえとかなあかん
このときの判断が後々、日本映画史に確固たる足跡を残すことになった。
明治29年(1896)、大阪。
本邦初の映画が、難波で上映された。
ヴァイタスコープ、シネマトグラフ……映写機初輸入秘話。
ときおり小雪の舞う寒い日だった。和一はしかし、そんな天候とは逆に早朝から体を火照らせ、夜の実験試写をいまかいまかと待ち遠しく思っていた。……これから日本を支える若い世代に、世紀の発明品をしかと目に焼きつけてもらいたかったからだ。(本文より)
■東 龍造(ひがし りゅうぞう)
1954年、大阪市生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。日本ペンクラブ会員。関西大学社会学部非常勤講師。本作が初のフィクションで、このペンネームを使うのははじめて。本名(武部好伸)で、エッセイストとして映画、ケルト文化、洋酒、大阪をテーマに執筆活動に励んでいる。著書に「ケルト」紀行シリーズ全十巻(彩流社、1999~2008)、『ぜんぶ大阪の映画やねん』(平凡社、2000)、『スコットランド「ケルト」の誘惑 幻の民ピクト人を追って』(言視舎、2013)、『ウイスキー アンド シネマ 琥珀色の名脇役たち』(淡交社、2014)、『大阪「映画」事始め』(彩流社、2016)、『ヨーロッパ古代「ケルト」の残照』(同、2020)などがある。