ルリユール叢書 第20回配本 (28冊目)

装幀は小沼宏之さん
フリードリヒ・シュレーゲル 武田利勝=訳
ルツィンデ 他三篇 Lucinde und drei kritische Schriften
予価:本体価格3,600円+税
予定ページ数:360頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-240-8 C0397
刊行予定:2022年1月下旬
自分の愛とか君の愛とか、僕にはもう言えないよ。ふたつの愛はお互いに等しく、完全にひとつ。愛と、それに応える愛とは同じってこと。これこそ結婚、つまり僕たちの精神の永遠の統一、永遠の結合だ。「精神と官能」「男と女」――色鮮やかな生の無限の混沌を、あふれる機知とイロニーでもって、めくるめくアラベスクへと織りあげたマニエリスム小説の傑作『ルツィンデ』のほか、文学と哲学、そして愛をめぐるフリードリヒ・シュレーゲルの初期批評3篇を収録。
数時間前までシュレーゲルの『ルツィンデ』を読んだせいで頭がくらくらし、まだ引きずったままです。
──フリードリヒ・シラー
ここには、完全無欠な愛がある。精神と官能とが、同一の作品中、同一の人物中で隣り合っているだけでなく、あらゆる表現と筆致一つひとつのなかで、緊密に結び合っている。
──フリードリヒ・ダニエル・シュライアマハー
作品を創造する自由は創造物を破壊してゆく自由を同時に確保せねばならぬと彼は信じる、つねに不満だけが自己にある。彼は作品の嘘を、偽でない嘘をのっぴきならず知っていた。しかもそれだけを早急に表現した。
──保田與重郎
当時ベルリンにみなぎっていた不穏な空気がいかなるものか、あらんかぎりの観念、意見、判断がいかに沸き立ち、揺らいでいたか。これは経験したものでないと想像もつくまい。『ルツィンデ』たった一冊で、それまでの道徳観念がすっかり揺さぶられてしまったのだ。
──K・A・ファルンハーゲン・フォン・エンゼ
多くの人の表情が〔…〕ルツィンデと聞くや、皮肉な笑顔に歪むだろう。それも、下卑たにやけ顔に。〔…〕連中はその他多くの点と同様、間違っている。ルツィンデの作者を自分と同等と思ったなら、なおさら大間違いである。
──フリードリヒ・ド・ラ・モット・フケー
【著者略歴】フリードリヒ・シュレーゲル(Friedrich Schlegel 1772–1829)ハノーファーに生まれる。のちに「初期ロマン派」と呼ばれる思想的・文学的潮流の理論的指導者として、兄アウグスト・ヴィルヘルムとともに雑誌「アテネーウム」を刊行。それまでの古典文献学や哲学研究から得た直観と洞察、また盟友ノヴァーリスとの交流を通して得た自然学的知見などを縦横に発揮しながら、モデルネの幕開けの時代を鋭利な批評的断章でもって挑発した。唯一の小説作品『ルツィンデ』はスキャンダルを巻き起こしアカデミズムへの道を断たれるも、死の直前まで文化的、政治的、哲学的発信を精力的に続けた。【
訳者紹介】武田利勝(たけだ・としかつ)1975年愛知県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻博士後期課程修了。早稲田大学第二文学部助手、駒澤大学総合教育研究部准教授を経て、九州大学人文科学研究院准教授。専門は近代ドイツ思想、文学。