
ルリユール叢書 第21回配本 (29冊目)
ジョウゼフ・コンラッド Joseph Conrad
山本薫=訳
放浪者 あるいは海賊ペロル The Rover 予価:本体価格3,800円+税
予定ページ数:416頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-242-2 C0397
刊行予定:2022年4月上旬
憂鬱は、ペロルには馴染みのない感情だった。というのも、そんなものは海賊、つまり「沿岸の兄弟」の一員の人生には関係がないからだ。〔…〕陰気な憤怒や狂ったようなお祭り気分が外からやって来て一時的に爆発したことならあった。しかし、すべては空しいというこの深い内なる感覚、自らの内なる力を疑うあの気持ちを味わったことは彼には一度もなかった。
若くして祖国を離れ、他郷での船乗り体験から作家へと転身、複数の言語と文化を越境しながら、政治小説、海洋小説の名作を世界文学に残した〝二重の生を持つ人〟コンラッド――ナポレオン戦争期の南仏・地中海の、老練の船乗りの帰郷と静かな戦いを描く、知られざる歴史小説。本邦初訳。
私は〔…〕ベッドの上で身を起こして『放浪者』を読んだ。朝が来て、私が知るコンラッドの醍醐味を酔っぱらいのように飲み干すと、このまま旅を続けていたいという思いが胸に去来し、伝統の風に吹かれた若者のような気分になった。
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アーネスト・へミングウェイすべてがリアルで同時にとても詩的ではないか。
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ホルヘ・ルイス・ボルヘスコンラッドの文体における「形容の執拗さ」〔…〕は、ストーリーから合理性を奪って完全にあいまいな雰囲気で覆い、夢幻的なリアリティのリズムと流れを生み出す〔…〕文体の本質的な特徴の一つである。
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マリオ・バルガス・ジョサ政治家や実業家の真価を問うような台風が到来しない〔…〕後期コンラッドの世界は意図されざる曖昧な雰囲気に包まれている〔…〕我々はコンラッドの後期作品の中へ探検に出かけてきっとすばらしい戦利品を持ち帰るのだが、それでもその広大な土地は我々のほとんどが足を踏み入れることのないまま残されるのだろう。
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ヴァージニア・ウルフコンラッドは、二十世紀において英文学を文明化し、百年にわたりほぼ断絶状態にあったヨーロッパと再び接触させた作家の一人である。
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ジョージ・オーウェル【著者略歴
】ジョウゼフ・コンラッド(Joseph Conrad 1857–1924)
ポーランド出身のイギリスの小説家。現ウクライナのベルディチェフで地主貴族の家に一人息子として生まれる。少年時に両親を失い、母の兄タテウシュ・ボブロフスキの後見のもとで育つ。探検家の伝記や海洋文学を乱読、突然船乗りになることを思い立ち、17歳で祖国ポーランドを離れマルセイユへ向かった。英国商船で世界方々を航海した体験をもとに、『オルメイヤーの阿房宮』『青春』『闇の奥』『ロード・ジム』『ノストローモ』『シークレット・エージェント』など、国際的な舞台や政治的主題を材にした小説を次々に発表、世界文学の金字塔を打ち立てた。
【訳者紹介
】山本薫(やまもと・かおる)
大阪府大阪市生まれ。大阪市立大学文学研究科博士課程単位取得満期退学後、同大学にて博士号(文学)取得。現在、滋賀県立大学准教授。専門はジョウゼフ・コンラッド。主著はRethinking Joseph Conrad’s Concepts of Community: Strange Fraternity (Bloomsbury 2017)。