装幀は小沼宏之さん
ルリユール叢書 25回配本(35冊目)
スタール夫人 Madame de Staël 石井啓子=訳
三つの物語 Trois Nouvelles 定価:本体価格2,400円+税
予定ページ数:232頁
四六変形・ソフト上製
ISBN97848-4-86488-253-8 C0397
刊行予定:2022年8月下旬
ナポレオンとの政治的対立から追放されながら、個人の自由と寛容を重んじ、政治的リベラリズムを貫き通したスタール夫人――奴隷制度廃止宣言の翌年に刊行された、三角貿易の拠点セネガル、アンティル諸島、ル・アーヴルを舞台にした三人のヒロインたちによる「愛と死」の理想を描く中編小説集。本邦初訳。
わたしの人生があなたの役に立たないのなら、生きてはいられない。わたしの命を救いたければ、方法はこれしかないわ。なにがあっても、わたしを拒んだ、あのあなたでいつづけることね。おそらく一世紀にひとりくらいしかお目にかかることのできない、ごく例外的な、傑出した人物──
バンジャマン・コンスタン天才の多くがそうであるが、とりわけ彼女を傑出した存在たらしめているのは、その知性の幅広さ、革新への欲求、そしてありあまる愛である。──
サント゠ブーヴ感情生活の強烈さによって、彼女はルソーの娘である。不安な、熱にうなされた想像力と燃え上がる心の持ち主である。ルソーの魂の持ち主であるが、その精神によって、ヴォルテールの娘である。理性的で社交を好む十八世紀の娘である。──
ギュスターヴ・ランソン 彼女の人生は、脚本家によって書かれた波乱万丈の小説さながらだ──
ミシェル・ヴィノックその死もさることながら、それによって才能が消えてしまうことに呆然とせざるをえない。だれもが悲嘆にくれ、社会がうちのめされている。だれもが同時に、同じ喪失感を味わっている。──
シャトーブリアン【著者略歴
】スタール夫人(Madame de Staël 1766–1817)
ジャック・ネッケルの娘として、1766年パリに生まれる。母シュザンヌの開くパリのサロンで著名な哲学者や文学者と交流、幼くして才気煥発ぶりを発揮。20歳でパリ在住のスウェーデン大使と結婚、スタール夫人(Madame de Staël)となる。政治的色彩の濃いサロンを主催し、フランス革命を発端に、ヨーロッパに新たな秩序が築かれようとする激動の時代に翻弄されながらも、旺盛な言論・著作活動をおこなった。主著に、『文学論』、『ドイツ論』、小説『デルフィーヌ』、『コリンヌ』がある。
【訳者紹介
】石井啓子(いしい・けいこ)
1955年、兵庫県生まれ。フランス文学者・翻訳家。訳書に、シャルル・ソルリエ『わが師シャガール』、アンリ゠フレデリック・ブラン『エレベーター』、『眠りの帝国』(以上、新潮社)、エミール・ゾラ『愛の一ページ』、ジョルジュ・サンド『黒い町』(以上、藤原書店)、ヴァレリー・ラルボー『恋人たち、幸せな恋人たち』(筑摩書房)、アラン・コルバン『人喰いの村』(共訳、藤原書店)、アベ・プレヴォー『マノン』(共訳、新書館)がある。