東條慎生後藤明生の夢 朝鮮引揚者(エグザイル)の〈方法〉ISBN978-4-86488-256-9
C0095 ¥3000E
四六判上製 336頁
2022年9月下旬 刊行予定
1945年、敗戦とともに崩壊した「大日本帝国」の植民地主義。38度線以北の故郷を喪失した少年は、「異邦人=在日日本人」として祖国へ帰還し、のちに「戦後文学の鬼才」として特異な作品を書き続けることになるーー。
読み/書くことの「自由」を体現し、日本/文学と生涯にわたり格闘し続けた小説家・後藤明生。彼は、一体どのような問題に囚われていたのか? 現代の日本語小説に最大の理論的影響を与えた作家の「方法」の由来と全体像を、ポストコロニアルの文脈から読み解く、後藤明生に関する初の長篇評論。
【目次】序章 私という喜劇――後藤明生の「小説」
第一部 『挾み撃ち』の夢――〈初期〉
第一章 「異邦人」の帰還――初期短篇1
第二章 ガリバーの「格闘」――初期短篇2
第三章 「引揚者」の戦後――『挾み撃ち』の夢1
第四章 「夢」の話法――『挾み撃ち』の夢2
第二部 失われた朝鮮の父――〈中期〉
第五章 故郷喪失者 たちの再会――『思い川』その他と「厄介な問題」について
第六章 引揚者の傷痕――引揚げ三部作1『夢かたり』
第七章 それぞれの家/郷 ――引揚げ三部作2および『使者連作』
第八章 「わたし」から「小説」へ――一九七九年・朝倉連作と『吉野大夫』
第三部 混血=分裂の近代日本――〈後期〉
第九章 分裂する日本近代と「転向」――『壁の中』
第十章 メタテクストの方法――八〇年代1
第十一章 戦・死・墓――後藤明生の〝戦争文学〟――八〇年代2
第十二章 日本(文学)を分裂させる――九〇年代
終章 自由と呪縛――引揚者という方法
【本文より】現在、重要な作品の復刊によって著作の入手がかなり容易になったけれども、いまだに後藤明生の全体像を俯瞰した論考はない。本書は、後藤明生案内ともなるよう主要な作品をたどりつつ、「引揚げ」という観点からその全体像を明らかにすることを目指している。
後藤は笑いのうちに自身の分裂、世界の「とつぜん」さを肯定する。それでいながら、私を、文学を、日本人を、日本を、純粋な一個の確たる存在だとする固定観念に対し、その混血性・分裂性を探り出し、再構築していく。絶対性のなかに相対性を見いだしていく営為、これをこそ「笑い」と呼ぶのではないか。後藤明生を読むということは、小説を、文学を、日本を新たな目で見直しながら、朝鮮と日本の関係、私と他者の言葉の関係を探り直し、位置づけ直す営為ともなる。この普遍的な原理において後藤明生はつねに読まれ、読み直される存在であり続けるはずだ。
【著者略歴】東條慎生(とうじょう・しんせい)1981年生まれ。ライター。和光大学表現学部卒。「幻視社」サイト内「後藤明生レビュー」を運営。これまでの主な寄稿・参加:「裏切り者と英雄のテーマ 鶴田知也「コシャマイン記」とその前後」(『北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅』寿郎社)、「再演される戦前 アイヌ「民族」否定論について」(『アイヌ民族否定論に抗する』河出書房新社)、紹介「イスマイル・カダレ」(『ノーベル文学賞にもっとも近い作家たち』青月社)、「解説鼎談(岡和田晃、山城むつみ)」(『骨踊り 向井豊昭小説選』幻戯書房)。
幻視社URL:http://genshisha.g2.xrea.com/
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