広瀬 徹籾山仁三郎〈梓月〉伝 実業と文芸ISBN978-4-86488-270-5 C0095 定価:本体2500円+税(税込2750円)
4月10日頃刊
江戸の粋を胸に、実業と文学に生きたディレッタント
胡蝶本や「文明」の版元として明治・大正期に足跡を残す籾山書店。
虚子から「ホトトギス」を引き継いだその人は、荷風の生涯の友であり、鷗外を敬愛し、漱石を痛罵した……籾山は江戸から続く飛脚問屋の三男坊として生まれるが、その実家は継がず、婿入りした海産物問屋も継がず、出版業を生業とする実業を開始する。籾山にとってはまず生業が重要であり、文芸を余技と位置づけられている。籾山は経済に対する関心も強かったが、これまで採りあげられる機会は無かった。本書は、〈生業と余技〉という観点から籾山の遺業を捉え直す試みである。
籾山仁三郎(にさぶろう)、俳号梓月(しげつ)は、現在、文芸評論家あるいは装幀美術に関心のある美術評論家に、俳人、出版人として言及されることはあるが、その機会は稀である。これまで籾山は、永井荷風の陰に佇む人物として位置づけられてきた。荷風より丸二年先に生まれた籾山(明治11年1月生)は、荷風より丸一年先に逝く(昭和33年4月2歿)。
◆著者略歴
◆ひろせ・とおる
昭和21年(1946年)東京生まれ。東京外国語大学卒。34年間の会社員経験を経て、15年間大学教員として教壇に立つ。現在名古屋外国語大学名誉教授。「戦間期会社員による文化形成」「日本におけるディレッタンティズム」をテーマに研究を継続。