
〈ルリユール叢書〉第32回配本 (45冊目)
ギ・ド・モーパッサン 渡辺響子=訳
モン゠オリオル Mont-Oriol 定価:本体価格3,500円+税
予定ページ数:376頁
四六変形・ソフト上製I
SBN978-4-86488-279-8 C0397
刊行予定:2023年7月下旬
こういう温泉街ときたら、信じられないよ。地上にある唯一の夢幻の国だね! たった二カ月の間に、一年の残りの期間に宇宙の他の場所で起きるよりもたくさんのことが起こるんだ。レジャーと治療、自然のスペクタクル、社交と娯楽、投機と事業、源泉所有権をめぐる資本所有者たちのたくらみと諍い、恋愛と姦通――温泉リゾート「モン゠オリオル」を舞台に種々様々な人間たちの「感情」が絡み合う、モーパッサンが描く一大〈人間喜劇〉。
『モン゠オリオル』においては、モーパッサンの普段の厳しさは妙に和らいでいて、依然として悲観的ではあっても氏の悲観主義が微笑んだと言っておかなければ、あとから反省することになるだろう。これまで氏の小説には感情が欠けていたが、喜ばしいことに『モン゠オリオル』では、それに出会うことができるのだ。
──フェルディナン・ブリュンチエール
『モン゠オリオル』のような風俗小説においてモーパッサンは、われわれの新しい時代の社会の本質的な問題であるにもかかわらず研究されることのない種族の衝突をテーマとしている。
──ポール・ブールジェ
ゾラのペシミズムほど叙情的ではなく、叙事詩的な夢想ではなく残酷な観察から演繹されるモーパッサンのペシミズムは、これまであらゆるタイプの読者、昔日の小説の青い鳥を熱烈に支持する人々に衝撃を与えるような乱暴な様相をしていたが、そういった頑固な読者は『モン゠オリオル』を読むべきだ。
──アナトール・フランス
【著者略歴
】ギ・ド・モーパッサン(Guy de Maupassant 1850–93)
ノルマンディー生まれのフランスの小説家。『オルラ』『手』『首かざり』などの短編や時評(クロニック)、『女の一生』『ベラミ』などのシニカルな作風の小説で知られる。一八八〇年、ゾラたちと発表した『メダンの夕べ』所収の『脂肪の塊』で一躍有名になる。流派に属さず、フローベールとブイエから強い影響を受けた。すべてを見、眼差しによって理解しようというモットーのもと、冷徹な人間観察と自然描写を特徴とした。スポーツを好み、舟や気球からは自然の持つ力と人間の小ささを実感し、新しい身体感覚を得た。
【訳者紹介】
渡辺響子(わたなべ・きょうこ)
東京大学大学院(総合文化研究科)博士課程単位取得退学。パリ第三大学で文学博士号取得。現在明治大学法学部教授。専門はゾラ、サンド、モーパッサンを中心とする十九世紀フランス小説。訳書にアラン・コルバン『レジャーの誕生』、『記録を残さなかった男の歴史』(以上、藤原書店)、ダニエル・ペナック『エルネストとセレスチーヌのお話』(銀の月)他。