
装幀は小沼宏之さん

〈ルリユール叢書〉第34回配本 (48冊目)
ガブリエル・マルセル Gabriel Marcel 古川正樹=訳
稜線の路 Le Chemin de crête 予価:本体価格3,500円+税
予定ページ数:336頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-284-2 C0397
刊行予定:2023年9月下旬
人間に潜む根源的欺瞞を暴き出し、非現実を現実に変えてしまう秩序転倒の現代を告発し、在るべき世界秩序を啓示する――『形而上学日記』の哲学者・劇作家ガブリエル・マルセルの哲学思想を先導する〈筋書きの無い演劇〉にして、マルセル戯曲作品の頂点を極めた全四幕の悲劇。本邦初訳。私たちから取り上げられた良きものは、単に私たちに不足しているものではないのです。それら良きものは、私たちの内に在るのです。ただ、裏返された影として、夜の状態にある荒れ果てた力として……
他処と同様、哲学においても、本物だけが持続する。だからこそ、モンテーニュ、パスカル、メーヌ・ド・ビランのように、ガブリエル・マルセルが常に読者をもつことは保証されているのである。かれの作品においては、人間が直接に人間に語りかける。すなわち、かれは新たな友を自分につくることをけっしてやめないゆえに、かれの作品は常に読者をもつことだろう。
――エティエンヌ・ジルソン
あなたの演劇が、まさしく、健全化のはたらき、浄化のはたらきをなすのは、あなたの演劇が全然護教的でないからです。私が大変おどろかされるのは、『恩寵』、『砂の宮殿』のような戯曲、そして後には、『神の人』、『葬儀前の礼拝堂』、『偶像破壊者』のような戯曲において、悲劇は、人物たちの間で何も解決されていないところに成り立っている、ということです。
――ポール・リクール
この哲学者を、劇作家または音楽家としての彼から切り離すのは正しくない。そこには分離することのできない一つの全体としての有機体がある。かくの如きが、おそらく、強靭な永続すべき運命をもった思想の特徴なのだ。
――ジャック・ド・ブルボン゠ビュセ
ガブリエル・マルセルは、哲学者たらんと欲したのでもなく、音楽家たらんと欲したのでもなく、ただ自らに誠実に生きようとした人である。彼にあっては日々の生と省察の哲学が一つであった。「呼吸するように」哲学した人であった。
――服部英二
【著者略歴】ガブリエル・マルセル(Gabriel Marcel 1889–1973)
フランスの哲学者・劇作家。パリに生まれる。6、7歳で劇作を試みた。十代半ばには音楽を、やがて哲学を志してソルボンヌ大学に入学。21歳で教授資格論文「シェリング哲学との関係におけるコールリッジの形而上学的諸理念」により合格した後、保養先の英国で交霊術にも深い関心を懐く。若年時からの知的・人間的素地、経験や関心に基づき、愛の問題を中心とする独創的な哲学的反省を展開しつづけた。カトリックとなるも教義とは無縁で傍観的な立場に留まった。
【訳者紹介】古川正樹(ふるかわ・まさき)
1957年11月、鹿児島県に生まれる。鹿児島県立鶴丸高等学校卒業。仏語論文「メーヌ・ド・ビランにおける哲学と宗教」により、パリ゠ソルボンヌ大学哲学博士(成績mention très honorable)取得。鹿児島大学・早稲田大学講師等を務める。著書に、彫刻家高田博厚が大画家ジョルジュ・ルオーの軌跡に即して述べた深い人間思想を初めて本格的に論じた『形而上的アンティミスム序説――高田博厚による自己愛の存在論』(舷燈社、2009年)がある。