装幀は小沼宏之さん
ルリユール叢書第35回配本 (49冊目)
ラーザ・ラザーレヴィチ 栗原成郎=訳
ドイツの歌姫 他五篇 予価:本体価格3,500円+税
予定ページ数:360頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-285-9 C0397
刊行予定:2023年10月下旬
気高い魂は沈黙した。息が詰まりそうになった。もはや涙は出なかった。涙は胸の中を流れて心臓の上に落ちてそこで石になった。
森鷗外『舞姫』を彷彿させる、ドイツ留学したエリート医学生の西欧との出逢い、東欧との疎隔とその葛藤を描く自叙伝的作品『ドイツの歌姫』。古き良き民衆を大らかな共感と深い洞察で活写し、19世紀セルビアのリアリズム文学を確立したラザーレヴィチの中短編六篇を収録。本邦初訳。【著者略歴】ラーザ・ラザーレヴィチ(Лаза К. Лазаревић / Laza K. Lazarević 1851–91)
セルビアの医師、作家。1851年セルビア北部のサヴァ川沿いの町シャバッツに生まれ、1891年ベオグラード没、享年39。新設間もないベオグラード大学法学部を卒業後、国費留学生としてベルリン大学医学部に留学し、帰国後は医師として働き新興国家セルビアの医学の発達に多大の貢献をした。医療に従事するかたわら中短編小説を書いた。古代的な家父長制大家族共同体の社会構造をもつセルビアの農村を舞台としてそこに生きる人々の生活を温かい目で描写したリアリズム作家として注目された。珠玉の作品9篇は広く愛読されている。
【訳者紹介】栗原成郎(くりはら・しげお)1934年、東京生まれ。東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。東京大学名誉教授。博士(文学)。専攻はスラヴ文献学・スラヴ言語文化論。 著書に『スラヴ吸血鬼伝説考』(河出書房新社)、『ロシア民俗夜話』(丸善)、『ロシア異界幻想』(岩波書店)など。訳書にアンドリッチ『宰相の象の物語』(松籟社)、『呪われた中庭』(恒文社)、ブルリッチ゠マジュラニッチ『昔々の昔から』、ポゴレーリスキイ『分身』(群像社)など。
■セルビア文学 既刊
山の花環 小宇宙の光イェレナ、いない女 他十三篇