
装幀は小沼宏之さん

〈ルリユール叢書〉第41回配本 (60冊目)
エヴァン・ダーラ 木原善彦=訳
失われたスクラップブック 予価:本体価格5,200円+税
予定ページ数:584頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-310-8 C0397
刊行予定:2024年11月下旬
空が海を飲み込むこの場所で、私はよろよろと時間の縫い目に向かう そこはたどり着けない場所なのだと分かるところまで、私に近寄らせてほしい このゆっくりとした落下、私の進歩は、消失と透明性――不透過性の透明性――に到達するための運動なのだと言ってほしい
“ポスト・ギャディス”と目され、リチャード・パワーズが正体とも噂された、トマス・ピンチョン以上に謎めく、ポスト・ポストモダン作家エヴァン・ダーラ――“読まれざる傑作”として話題となった、ピリオドなしの、無数にして無名の語りで綴られる大長編の奇書がついに本邦初訳で登場!この処女作は、ジョゼフ・マッケルロイ(『密輸人の聖書』)とトマス・ピンチョン(『V.』)といった野心的デビュー作を思い起こさせるが、エヴァン・ダーラは比較のハードルをさらに、ウィリアム・ギャディスの『認識』の高みにまで引き上げさせる。
――「ワシントン・ポスト」紙
実験的でありながら道徳的、破格だが感動的、ポストヒューマン的だが心底人間的な小説が可能であることをダーラは示した。記念碑的で巧妙、情緒豊かで容赦がないこの作品はすべての読者をとらえてはなさない。とてつもない偉業だ。
――リチャード・パワーズ
【著者略歴】エヴァン・ダーラ(Evan Dara ?– )
本名、年齢ともに不詳。フランス在住か。1995年、デビュー作『失われたスクラップブック』が、ポストモダン作家ウィリアム・T・ヴォルマンによってFC2賞に選ばれる。ワシントンポスト紙の書評にて「ジョゼフ・マッケルロイの『密輸人の聖書』、トマス・ピンチョンの『V.』などの野心作を思い起こさせるが、エヴァン・ダーラは比較のハードルをさらに、ウィリアム・ギャディスの『認識』の高みにまで引き上げさせる」と絶賛される。その後、いくつかの雑誌や新聞で「読まれざる傑作」として話題となる。
【訳者紹介】木原善彦(きはら・よしひこ)
1967年、鳥取県生まれ。京都大学文学部卒業、同大学院文学研究科修士課程・博士後期課程修了。博士(文学)。大阪大学大学院人文学研究科教授。専門は現代英語圏文学。著書に『実験する小説たち―物語るとは別の仕方で』(彩流社)、『アイロニーはなぜ伝わるのか?』(光文社新書)など。訳書にウィリアム・ギャディス『JR』(国書刊行会、第五回日本翻訳大賞受賞)、リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』、アリ・スミス『両方になる』(以上、新潮社)、ベン・ラーナー『10:04』(白水社)などがある。