〈ルリユール叢書〉第43回配本 (62冊目)
フリードリヒ・ヘッベル磯崎康太郎=訳
ニーベルンゲン 三部のドイツ悲劇 予価:本体価格4,800円+税
予定ページ数:448頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-316-0 C0397
刊行予定:2025年1月下旬
フロイトやブレヒトにも影響を与えた、19世紀ドイツ最大の悲劇作家フリードリヒ・ヘッベル――中世叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に忠実な劇作化が試みられ、ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指輪』四部作と双璧をなすことになった、最後の観念劇とも言われるヘッベル晩年の大傑作。
『ニーベルンゲン』を三部構成にしたのは、素人でもそれが当然だと思えるがゆえに偉大な芸術的功績である。この構成は、詩人が劇にふさわしくない冗漫さに陥ることなく、筋書きのもつ悲劇性豊かな内容を余すところなく使うことができるという利点をもたらしている。この構成は見るたびにつねに新しい、そしてつねに感動的な状況をわれわれの魂に開示してくれるほどに計り知れない悲劇的深みのある題材をいくつか生み出している。――
ハインリヒ・フォン・トライチュケ観念劇にはイデオロギー的情熱や構成能力が必要な要素となる。そこでは登場人物をつくることだけでなく、かれらを収める絵、額縁、壁、家、さらには新しい空間をもつくることが重要だからである。これらはすべて思索家の情熱によって打ち立てられるというだけではなく、透けて見えなくなったりするものであるため、劇中で生を営み、観衆に徐々に洞察を授ける登場人物の動きでしか気づかれないものでもある。これをうまく表現した最後の人物がヘッベルである。――
ローベルト・ムージル『ファウスト』から『ニーベルンゲン』までのドイツの古典作家の作品は、なんと喜劇にふさわしい素材と着想の宝庫であることか!――
ベルトルト・ブレヒト【著者略歴】フリードリヒ・ヘッベル(Friedrich Hebbel 1813–63)
ドイツの劇作家、詩人、小説家。デンマーク王国領ホルシュタイン公国のヴェッセルブーレンに生まれる。1840年、処女作『ユーディット』を発表し好評を博す。その後、ロベルト・シューマンの同名のオペラの原作となった『ゲノフェーファ』、『マリア・マクダレーナ』などを発表。1836年にミュンヘンなどに遊学後、デンマーク国王の扶助によりパリやローマを旅行。ウィーンで女優クリスティーネ・エングハウスと結婚、劇作家としての名声を確立した。19世紀ドイツ最大の悲劇作家と称され、フロイトやブレヒトなど、後世の思想家や作家にも大きな影響を及ぼした。
【訳者紹介】磯崎康太郎(いそざき・こうたろう)
1973年、神奈川県生まれ。現在、福井大学教授。専門は近現代ドイツ文学。著書に『アーダルベルト・シュティフターにおける学びと教育形態』(松籟社)、『ドイツ語圏のコスモポリタニズム 「よそもの」たちの系譜』(共著、共和国)、訳書にアーダルベルト・シュティフター『書き込みのある樅の木』、アライダ・アスマン『記憶のなかの歴史―個人的経験から公的演出へ』(ともに松籟社)などがある。