

〈ルリユール叢書〉第45回配本 (65冊目)
ヘンリー・ジェイムズ 齊藤昇=訳
デイジー・ミラー/ほんもの 予価:本体価格2,700円+税
予定ページ数:248頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-322-1 C0397
刊行予定:2025年4月下旬
その視線には遠慮や気遣いといった様子が、まったく窺えなかった。だからといって、それは慎み深さを捨てたような視線ではない。彼女の瞳の奥には、たぐいまれな誠意と清冽なる魅力が潜んでいた。
ヨーロッパにおける、アメリカ人女性の無垢で奔放な生を描き、〈国際テーマ〉の名作として文名を高めた短編「デイジー・ミラー」。画家とモデルと絵画の関係を寓話的に描き出す〈芸術もの〉の短編「ほんもの」。ヘンリー・ジェイムズの小説的リアリティの特性が浮かび上がる珠玉の2篇。ヘンリー・ジェイムズは新しいリアリズム文学の世界を構築した貢献者だ。――
エドマンド・ウィルソンヘンリー・ジェイムズは想像力に富んだ偉大なる文学的な革新者である。――
レオン・エデル「デイジー・ミラ―」は、ヨーロッパ社会における自由奔放なアメリカ人女性のロマンスを描いた読み応えたっぷりの珠玉作である。――
リチャード・A・ホックス短編小説「ほんもの」は、人生と芸術と想像における交差性概念の有効性を紐解いた秀作である。――
ナスルーラ・マンブロール【著者略歴】ヘンリー・ジェイムズ(Henry James 1843–1916)
1843年にニューヨークで生まれる。一歳年上の実兄は、プラグマティズム思想を標榜する哲学者・心理学者として斯界に確固たる地歩を築いたウィリアム・ジェイムズ。代表作は本書に収めた短編小説「デイジー・ミラー」や「ほんもの」をはじめ、ゴシック小説系の中編小説「ねじの回転」、長編小説『ワシントン・スクウェア』『ある貴婦人の肖像』『ボストニアンズ』『カサマシマ侯爵夫人』『使者たち』など。異文化理解を礎にした文学的融合を意識し、人間の心理の微妙な襞をくすぐる優れた作家として知られる。
【訳者紹介】齊藤昇(さいとう・のぼる)
1955年、山梨生まれ。立正大学大学院博士後期課程修了。文学博士。現在、立正大学文学部教授。専門はアメリカ・ロマン派の文学研究。訳書にワシントン・アーヴィング『ウォルター・スコット邸訪問記』、『ブレイスブリッジ邸』、『スケッチ・ブック(上・下)』(以上、岩波文庫)、ワシントン・アーヴィング『アルハンブラ物語』(光文社古典新訳文庫)、ジョン・スタインベック『ハツカネズミと人間』(講談社文庫)、アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海/殺し屋』(文春文庫)など。