
〈ルリユール叢書〉第48回配本 (68冊目)
ピエール・ジャン・ジューヴ 小川美登里・飯塚陽子=訳
カトリーヌ・クラシャの冒険 予価:本体価格4,500円+税
予定ページ数:408頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-326-9 C0397
刊行予定:2025年5月下旬
彼らの沈黙はふたり分だが、あるのはたったひとつの沈黙だった。なぜなら言葉は発せられ、理解され、そこで止まってしまうけれど、沈黙は広がり、相手に届き、地下に眠る運命的な力で相手を包み込み、抱きしめるから。ボードレール、ネルヴァル、ヘルダーリンに列せられる詩人・小説家ピエール・ジャン・ジューヴ――映画女優カトリーヌをめぐる三角関係と破局を描く『ヘカテー』。小説の結構が瓦解し、主人公の夢と現が混淆する『ヴァガドゥ』。めくるめく二つの物語がオペラのように紡がれる詩的長編小説。美とはひとつの解放である〔…〕ジューヴの作品ほどそれを見事に表すものはない。──
ルネ・ミーシャ私たちの時代の他のどの書物も比較にならないほどに、この作品ではすべてが発見であり、啓示であり、〈新たな生〉なのです。──
ガブリエル・ブヌールあなたの芸術は凝縮が生んだ奇跡です。──
マックス・ジャコブ1931年、文学の世界で夢と無意識の理論に最初に応答したのがジューヴではなかったとしても、彼はフロイトの第二局所論についてもっともよく知り、一九二〇年の『快感原則の彼岸』が論述するエロスとタナトスの対立を最初に活用したひとりでもある。──
ジャン・スタロバンスキー
【著者略歴】ピエール・ジャン・ジューヴ(Pierre Jean Jouve 1887–1976)
詩人、小説家、批評家。フランス北部アラスに生まれる。第一次世界大戦中、平和主義思想に触れるも、戦後は一転、聖性に貫かれた詩を探究しつづけた。フロイトの精神分析理論に初めて触れたフランス人のひとりでもあり、ジャック・ラカンを始めとする多くがその作品の重要性を指摘している。タゴール、シェイクスピア、ヘルダーリンのほか、アッシジの聖フランチェスコ、アビラの聖テレサの著作の翻訳者でもあり、モーツアルトやベルクのオペラに関する著作もある。
【訳者略歴】小川美登里(おがわ・みどり)
岐阜県生まれ。カーン大学にて博士号取得、現在、筑波大学人文社会系准教授。主な著書にVoix, musique, altérité : Duras, Quignard, Butor (L’Harmattan, 2010)、『ル・アーヴルから長崎へ』(パスカル・キニャールとの共著、水声社)、主な訳書にパスカル・キニャール『いにしえの光』、『楽園のおもかげ』、『静かな小舟』(〈最後の王国〉シリーズ、水声社)、クリスチャン・ドゥメ『三つの庵』(共訳、幻戯書房)、ミシェル・ビュトール『レペルトワール IV[1974]』(共訳、幻戯書房)など。
飯塚陽子(いいづか・ようこ)
1993年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部仏文学専攻卒業。パリ第四大学フランス文学科修士課程修了。現在、フランスの食品関連企業にて通訳および渉外業務に従事している。