

〈ルリユール叢書〉第52回配本 (74冊目)
ジョルジュ・シムノン 中村佳子=訳
故ギャレ氏 リバティ・バー 予価:本体価格3,200円+税
予定ページ数:360頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-337-5 C0397
刊行予定:2025年11月下旬
もうずっと前から、この物語の中で、なにかが軋んだ音をあげているとは気づいていた……ああ、無理にわかろうとしないでいい!……物理的な手がかりがいくつもあるのに、それで物事が単純になるどころか、紛糾するなら、手がかりのほうに問題があるのだ……
作家シムノンが生涯を通じて書き続けた〈メグレ警視シリーズ〉の最初期の傑作二篇を合本。早晩、結実する〈硬い小説(ロマン・デュ―ル)〉を彷彿とさせる舞台で、偏見持ちで情の深いメグレ警視ならではの人間観察が冴える、じっくり味読したい探偵小説が新訳で復活!
……そこに漂う雰囲気、物語の様相、緊迫感、ユーモア、そしてなによりも人の情、憐れな、不運な人々についての理解、とりわけ若者たちについての理解、どれをとってもシムノンほど私の好みにぴったりくる作家はいません。――
ジョン・クーパー・ポウイズ私とシムノンが近しいのは、シムノンもまた、登場人物たちがどういう地形の中で、どういう環境の中で動き回っているのか正確に知ることを必要としているからです。――
パトリック・モディアノシムノンを読むたび強く感じるのは友情だ。人としてのシムノンはあまり好きじゃないが、彼の作品は大好きだ。どの作品を読んでも、友に再会したような気分になる。――
ピエール・ルメートルメグレは法を体現する者であり、犯罪人を暴く義務を負ってはいるかもしれないが、けっして裁くことはない。そこに彼の強さがあり、人間らしさがある。メグレは過ちを犯す人々の上にいるのではない。傍らにいる。――
フィリップ・クローデルメグレは全編かけて人殺しという幻影を追いかけるかわりに、犯罪者に掛かっているベールを一枚いちまい剥いでいく。知らず知らずのうちに読者は、どうしてもそう振る舞わざるをえなかったその人物の心情を受け入れられるようになっていく。――
トマ・ナルスジャックシムノンはとても洗練されています。きわめて簡潔で、それでいて喚起力の高い描写を見事に行う。とても映画的なんです。――
パトリス・ルコント【著者略歴】ジョルジュ・シムノン(Georges Simenon 1903–89)
ベルギーのリエージュ生まれ、フランス語圏の作家。十代半ばから地元紙の記者として旺盛な執筆意欲を発揮し、一九二二年にパリへ出て作家活動を始める。複数のペンネームでコント、恋愛小説、冒険小説を量産、また船でフランス国内や近隣国を巡り見聞を広める。1931年より初めて本名名義による〈メグレ警視〉シリーズを刊行、大好評をもって迎えられた。以後、〈メグレ警視〉ものと並行して、『雪は汚れていた』(1948)など緊張感に満ちた長編群〈硬い小説(ロマン・デュール)〉も多数執筆。1955年にはアメリカ探偵作家クラブ(MWA)会長を務め、後に巨匠賞も受賞(1966)した。
【訳者略歴】中村佳子(なかむら・よしこ)
1967年、広島県生まれ。広島大学文学部哲学科卒。訳書にモーパッサン『ベラミ』(角川文庫)、コンスタン『アドルフ』、バルザック『ゴリオ爺さん』(以上、光文社古典新訳文庫)、ウエルベック『ある島の可能性』『闘争領域の拡大』(以上、河出文庫)、マッコルラン『黄色い笑い/悪意』(共訳、国書刊行会)など多数。