

〈ルリユール叢書〉第53回配本 (75冊目)
セシリア・マンゲラ・ブレイナード松田卓也=訳
虹の女神が涙したとき予価:本体価格3,600円+税
予定ページ数:368頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-86488-338-2 C0397
刊行予定:2025年12月下旬
ブホンの空が破壊され、そして乙女が逃走したことで、世界全体が薄暗く灰色で、虹のない場所になった。天と地は憂うつさと希望のなさに覆われた。絶望の感覚に疲れて、神々は話しあった。巨人に対して怒っていたが、直接介入してはいけなかったので、彼らがもっとも愛していた英雄トゥワアーンに助けを借りることにした。太平洋戦争時、日本軍の侵攻に抵抗するフィリピンの住民たちが自由のために戦う中、一人の少女が神話的想像力によってエンパワメントを歌い求める――フィリピン系アメリカ人女性作家ブレイナードの半自伝的なマジックリアリズム小説にして歴史証言の文学。本邦初訳。セシリア・マンゲラ・ブレイナードは、物語作家(ストーリーテラー)としての目と耳を生まれながらに備えている。アジア文化に特有の、色鮮やかで癒しの神話に包み込まれた『虹の女神が涙したとき』は、古典になることを運命づけられている。
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アラム・サローヤンブレイナードは、抑制の美とウベックへのまなざしを、成長してゆく少女の澄んだ歌声に重ね合わせている。その歌は民俗的な響きの合唱によっていっそう豊かに彩られ、やがてはひとつの揺るぎない声――多様でありながら結束する歌――として力強く響き渡っている。
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レオナード・キャスパー
女性戦士や女神の物語、そして幻想的な夢を、現実の出来事に織り込みながら描き出す。ブレイナードの魅力あふれる登場人物たちは、まるで現実を超えた存在でありながら、目の前で変化し続け、しかも驚くほど真実味を帯びている。スピーディな展開でありながらも繊細に紡がれた、記念すべき最初の長編作品。
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カーカス・レビュー』【著者略歴】セシリア・マンゲラ・ブレイナード(Cecilia Manguerra Brainard 1947– )
フィリピンのセブ島生まれ。夫からタイプライターをプレゼントしてもらったことをきっかけに作家を志し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で創作を学ぶ。1985年に『角のある女とその他の短編』でデビュー。1991年に仲間たちと共に「フィリピン系アメリカ人女性作家と芸術家たち」(通称PAWWA)を立ち上げ、書籍の出版と編集に携わる。『セシリア・マンゲラ・ブレイナード短編選集』(2021)が第40回全比図書賞の英語短編部門を受賞。カリフォルニア州在住。
【訳者略歴】松田卓也(まつだ・たくや)
1987年、三重県生まれ。ノーステキサス大学大学院で博士号(アメリカ文学)を取得。九州工業大学を経て、現在は神戸市外国語大学英米学科講師。専門はアメリカ現代文学およびマイノリティー文学。