
〈ルリユール叢書〉第58回配本 (77冊目)
サミュエル・セルヴォン 星野真志=訳
ロンリー・ロンドナーズ予価:本体価格2,900円+税
予定ページ数:256頁
四六変形・ソフト上製
ISBN978-4-86488-344-3 C0397
刊行予定:2026年3月下旬
「季節の移り変わり、身を切るような冷たい風、落ちていく葉っぱ、青い芝生に降り注ぐ陽光、地面に積もった雪、ロンドンにしかないもの。いったいそれがなんなのか、どこにあるのか、なぜそんなものがあるのか、だれもわかっちゃいない。」
トリニダードの民衆音楽「カリプソ」と小説を融合させた“イギリス黒人文学の父”サミュエル・セルヴォン--クレオール英語の特異な文体で、ロンドン移民の苦境の現実と夢を「都会のブルース」として描き、イギリス社会をユーモラスに風刺する「黒い大西洋(ブラック・アトランティック)」の傑作小説。本邦初訳。セルヴォンは、英領カリブ海がこれまでに生んだ最も偉大な、したがって最も重要な民衆(フォーク)詩人である。──
ジョージ・ラミングセルヴォンの『ロンリー・ロンドナーズ』で目からうろこが落ちた。そこには僕もよく知っている都市の風景があり、それが度肝を抜くようなカリブ英語で描き出されていたのである。しかし僕にとってもっと意味深かったのは、イギリスに惹かれ、しかし受け入れられぬセルヴォン自身の矛盾に満ちた緊張が感じられた点であった。セルヴォンの小説には、イギリスの内側と外側に同時にいるという感覚があったのである。──
キャリル・フィリップスブラック・ブリティッシュの書き手による本として、二十世紀から今日に至るまで関心を集めつづけている唯一の著作は、サミュエル・セルヴォンがカリブ海からロンドンに着いたばかりの黒人移民の男たちの悪ふざけを描いた『ロンリー・ロンドナーズ』だ。──
バーナディン・エヴァリスト*「黒い大西洋(ブラック・アトランティック)」:奴隷制や植民地主義によって抑圧された近代の黒人たち(移民など)が、西洋の中にありながら西洋そのものではないという〈二重意識〉として存在しながら、西洋近代に対する対抗文化として、思想や音楽、抵抗運動を生み出していく、間文化的、トランスナショナルな時空間を指す。
【著者略歴】サミュエル・セルヴォン(Samuel Selvon 1923–94)
トリニダード島南部サン・フェルナンドに生まれる。1950年にイギリスに移住、インド大使館などで働くかたわら、『眩しい太陽』 (1952)、『島は世界である』(1955)、『ロンリー・ロンドナーズ』(1956)などの小説を発表し、イギリス黒人文学の先駆的作家として評価を高める。その後も小説、児童文学、ラジオドラマ、映画の脚本などを多数執筆。九四年、トリニダード滞在中に心臓発作により死去。
【訳者紹介】星野真志(ほしの・まさし)
1988年、群馬県生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科修士課程修了後、マンチェスター大学人文学部で博士号取得。現在、慶應義塾大学法学部専任講師。専門は近現代イギリスの文学・文化。共著に秦邦生編『オーウェル『一九八四年』を読む』(水声社)、訳書にナオミ・クライン『楽園をめぐる闘い』、オーウェン・ハサリー『緊縮ノスタルジア』(ともに堀之内出版)などがある。